ピダハン 「言語本能」を超える文化と世界観|ダニエル・L・エヴェレット
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■著者
ダニエル・L・エヴェレット=著
屋代通子=訳
■内容
著者のピダハン研究を、認知科学者S・ピンカーは「パーティーに投げ込まれた爆弾」と評した。ピダハンはアマゾンの奥地に暮らす少数民族。400人を割るという彼らの文化が、チョムスキー以来の言語学のパラダイムである「言語本能」論を揺るがす論争を巻き起こしたという。
本書はピダハンの言語とユニークな認知世界を描きだす科学ノンフィクション。それを30年がかりで調べた著者自身の奮闘ぶりも交え、ユーモアたっぷりに語られる。驚きあり笑いありで読み進むうち、私たち自身に巣食う西欧的な普遍幻想が根底から崩れはじめる。
とにかく驚きは言語だけではないのだ。ピダハンの文化には「右と左」や、数の概念、色の名前さえも存在しない。神も、創世神話もない。この文化が何百年にもわたって文明の影響に抵抗できた理由、そしてピダハンの生活と言語の特徴すべての源でもある、彼らの堅固な哲学とは……?
著者はもともと福音派の献身的な伝道師としてピダハンの村に赴いた。それがピダハンの世界観に衝撃を受け、逆に無神論へと導かれてしまう。ピダハンを知ってから言語学者としても主流のアプローチとは袂を分かち、本書でも普遍文法への批判を正面から展開している。
■目次
はじめに
プロローグ
第一部 生活
第1章 ピダハンの世界を発見
第2章 アマゾン
第3章 伝道の代償
第4章 ときには間違いを犯す
第5章 物質文化と儀式の欠如
第6章 家族と集団
第7章 自然と直接体験
第8章 一〇代のトゥーカアガ──殺人と社会
第9章 自由に生きる土地
第10章 カボクロ——ブラジル、アマゾン地方の暮らしの構図
第二部 言語
第11章 ピダハン語の音
第12章 ピダハンの単語
第13章 文法はどれだけ必要か
第14章 価値と語り——言語と文化の協調
第15章 再帰(リカージョン)──言葉の入れ子人形
第16章 曲がった頭とまっすぐな頭——言語と真実を見る視点
第三部 結び
第17章 伝道師を無神論に導く
エピローグ 文化と言語を気遣う理由
訳者あとがき
事項索引
人名索引
■抜粋
世界にはピダハン以外にも数の体系がほとんど見られない集団は数多くあるが、彼らも数は数えるし、近隣の集団と取引する社会経済的要請が高まってくると、数を使って商売できるように近隣の言語から数字を借用したりもしている。オーストラリアのワールピリ族がそのいい例だ。ピダハンは二世紀以上もの間、ブラジル人と交易してきた。それなのに彼らは通商を楽にする数字を借りてきていない。ピダハンの算術をウォーフ的に解釈すれば、ある語彙を借りて概念を表現するのが便利になるとしても、そもそも語彙がなければ便利になる概念もないのだから、借用する理由はないわけだ。ところがこのような解釈は、語彙がなければ概念があるはずがないという誤った推論を導きかねない。実際には強いウォーフ仮説は科学とも相容れないのだ。というのも科学とはつまるところ、それまで自分たちが表現する語彙を持ち合わせていない概念を発見することに尽きるからだ!(pp.306-307)
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